工作

【新車?出場】Dockside


長年、懸案となっていた仕掛品を、運転できるまでに仕上げました。
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プロトタイプはB&O鉄道のC-16です。本来の棲家は、深夜の併用軌道でしたから(実車で7フィートという、ボギー台車並の軸距がそれを象徴しています)、まぁ、仲間に入れてもいいのではないかと思っています。
はじめはBowserの最終製品だったのですが、ひょんなことから入手したVarneyのダイキャスト版の重量に魅かれ、上回りとシリンダーブロックを振り替えました。更に、別売されていたバルブギアーと、スーパーディテールセットの一部を取り付けてあります。あと、弊社では本線運用にも就く、ということで、マーカーライトも増設しました。
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さてこのモデル、キャブ下のエアタンクがぺったんこだったり、妻前面窓がなかったりと、ディテール的にも少々怪しいところがあります(実は米国HO初のスケールモデルですから、仕方ないといえば仕方ありません)。真面目にB&Oの塗装にする知識もありませんので、Komar Dry Transfersのデカールを使って、我々世代には憧れだった、John Allen氏の、Gorre and Daphetid Railroadのコスプレをさせてみました。サン・フランシスコのFラインでは、PCCが全米各都市で走っていた同類のコスプレをやっていますから、それに倣った訳です。
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走行用デコーダはLenzのGold+、サウンドデコーダはMRCのSOUNDER(1908)を搭載しています。動輪固定のBタンクですので、集電不良の影響をできるだけ軽減しようと、GOLDにPOWER-1を付加しています。GOLD+デコーダも当初、JSTソケット付のものを入れようとしていたのですが、無理矢理入れたため動作がなかなか安定せず、苦労しました。どうも無理に入れたため、基板上の回路にへアクラックでも入った様で、最終的には動作不良となってしまいましたので、JSTソケットなしのものと交換しました。というか、JSTソケット付きを修理に出したら何故かソケットなしが交換で戻ってきたので、試したみたところ、前より余裕をもって入ったので、そのまま使ってしまった、というのが真相です。また、着手から完成まで長時間かかってしまったので、SOUNDERも1665から1908にアップグレードしました。
もうひとつ苦労したのが、POWER-1の設定です。マニュアルでは、電源供給停止からの動作時間をCV112で設定することになっているのですが、これはCV122が正しい様です。
まだまだマーカーライトにMVレンズを入れたり、ロッドにネオリューブを塗ったりしなければなりませんが、それらは分解せずに実施できるので、とりあえず御披露目です。

【技術情報】ばねの話


トロリーモデルでは、全輪集電のための集電ブラシや、スプリングポイントのために、ばねが多用されます。そこで、どうすれば柔らかいばねを作ることができるのか、計算式から考えてみました。

Ⅰ.薄板ばね

集電ブラシ等に多用されるばねです。大きく変形しても、かかる力の変化が小さいことが求められます。
計算式は、ここにありました。これを変形して整理すると、

変化量∝荷重×ばね長の3乗/(ばね幅×ばね厚の3乗)

となります。∝は、左右が比例関係になることを意味しています。ここから、変化量と荷重の差分(⊿)を導くと、

⊿変化量∝⊿荷重×ばね長の3乗/(ばね幅×ばね厚の3乗)

となるかと思います。これを読み解くと…

① ばね長を長くすると、変化量は大きくなる。例えば、長さを1.26倍にするだけで、変化量は2倍になる。逆にいえば、同一変化量に対する荷重は半分になる。3乗で利いてくるので、ばね長を伸ばす効果は大きい。

② ばね幅を狭くすると、変化量は大きくなる。ただし、半分の幅にしても、変化量は2倍になるだけである。比例、反比例関係なので、ばね幅を小さくする効果は余り大きくない。

③ ばね厚を薄くすると、変化量は大きくなる。例えば、厚さを8割にするだけで、変化量は2倍になる。逆にいえば、同一変化量に対する荷重は半分になる。3乗で利いてくるので、ばね厚を薄くする効果は大きい。

薄板を自作することは極めて困難なので、薄いばね材を入手する機会があれば、迷わず入手しておくべきだと思います。

Ⅱ.細線ばね

スプリングポイント等に多用されるばねです。これも、大きく変形した際に、かかる力の変化が小さいことが求められます。
計算式は見当たりませんでしたが、丸線を角線と考え、ばね幅=ばね厚と考えれば、方向性は示せる筈です。で、式を書き換えると…

⊿変化量∝⊿荷重×ばね長の3乗/(ばね径の4乗)

となります。読み解くと…

① ばね長を長くすると、変化量は大きくなる。例えば、長さを1.26倍にするだけで、変化量は2倍になる。逆にいえば、同一変化量に対する荷重は半分になる。3乗で利いてくるので、ばね長を伸ばす効果は大きい。

② ばね材を細くすると、変化量は大きくなる。例えば、直径を8割にすると、変化量は2.4倍になる。逆にいえば、同一変化量に対する荷重は4割になる。4乗で利いてくるので、ばね材を細くする効果は非常に大きい。

ということになります。

Ⅲ.ねじりコイルばね

サーボモータによるポイント駆動で、リンケージに使ったばねです。これを柔らかくして、スプリングポイントを兼ねさせられれば好都合なので、これを柔らかくする方向を探ってみます。
計算式は、ここにありました。これを変形して整理すると、

⊿ねじり角∝⊿トルク×コイル平均径×コイル巻数/材料直径の4乗

となり、読み解くと…

① コイル平均径を太くすると、変化量は大きくなる。ただし、2倍径にしても、変化量(この場合はねじり角)は2倍になるだけである。

② コイル巻数を増やすと、変化量は大きくなる。ただし、2倍巻いても、変化量は2倍になるだけである。

③ ばね材を細くすると、変化量は大きくなる。例えば、直径を8割にすると、変化量は2.4倍になる。4乗で利いてくるので、ばね材を細くする効果は非常に大きい。

ということで、ポイントリンケージに使うねじりコイルばねは、直径を大きめに沢山、細い材料で巻くのがいいだろう、という結論になりました。

Ⅳ.余禄

ねじりコイルばね計算式のページに、縦弾性係数の表がありましたので、傾向をみてみました。

① 黄銅(=真鍮)線と燐青銅線は同じ値である。ということは、無理して燐青銅線でばねを作る効果は少ないのかもしれない。

② 燐青銅線で作るくらいなら、洋白線を使うほうがいいのかもしれない。

③ ベベリウム銅線が入手できるなら、集電ブラシにはそれを使うのがいいのだろう。

④ やはりばね用の鋼材やステンレス線は格が違う。

以上、ご参考になれば幸いです。

【線路工作】サーボモータによるポイント切替


ホイホイにおけるポイント制御の備忘録です。
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組み込み用の制御ボードを組立てました。写真は実装配置、配線等が固まった「量産形」で、この前に実装や動作の検証のため、「増加試作形」を1枚作っています。未だDS51K1は未実装です。これは後述の通り、ホイホイに取り付ける段階で実験的に配線を決定するためです。試作したバラック基板からの変更点は以下の通りです。

  • 部品の配置や配線のとり回しを全面的に見直し。
  • ボードを標準より薄い、厚さ0.8 mmの薄型ガラスエポキシ基板に変更。
  • 発振制御用のフィルムキャパシタを厚さ6mmのものに変更。
  • 電力供給回路で、サーボ直前に並列にに入っている、25V220μFの電解キャパシタを、標準品から高さ5 mmの薄型に変更。耐圧は10Vとなったが、5Vの回路なので保つと判断。
  • 同じく電力供給回路の、三端子レギュレータ周辺のキャパシタをデータシートにある容量に変更
  • 三端子レギュレータの、入力・出力端子間に、逆電圧保護用のダイオードを挿入


リレーは、高さ5.2 mmの1巻線ラッチング型、オムロンのG6KU-2P-Y(12V)を使いました。バラック基板での10kΩVRは、5kΩと2kΩの半固定抵抗2つに置き換えました。2つを直列に接続し、2kΩをリレーで短絡させることによって、抵抗値を減少させて出力パルス幅を小さくし、サーボモータを、向かって半時計方向に回転させます。定位・反位の区別は、ポイントの左右と、サーボモータの向き(前後2通り)、リレー接点(c接点なので、a接点として使うか、b接点として使うかで2通り)がからむので、設置時に実験して決めることにしました。

測定してみますと、DS51K1は、定位(Digitraxではclose、NCEではNormal、またはON)で橙色がプラスになります。出力電圧は13.6 Vで、ほぼ0.5秒通電されます。そこで、リレーの駆動電流9.1 mAと、コイル抵抗1315Ωから計算して、両者間に180Ωの電流制限抵抗を挟んで接続しました。

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増加試作ボードを単コロホイホイに取り付けました。ホイホイ基板との間に、基板裏の配線保護のため、2 mm厚程度のスペーサを挟んであります。使用したのがシノハラ製品なので、写真にある通り、リレーの空き接点を利用して、トングレールやリードレール、クロッシング部の極性を切り替えるべく準備しましたが、サーボでポイントが転換し始めるまでの間に極性が切り替わってしまうと短絡事故になりますので中止しました。これは後日、マイクロスイッチを付加して実現しようと考えています。

試運転してみると、中々好調です。

【線路工作】サーボモータ設置


ホイホイにおけるポイント制御の備忘録です。
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サーボモータをホイホイ基板内へ固定するために、0.5 mmt真鍮板をL字形に曲げて簡単なブラケットを作り、それを介してモータを4 mmtシナベニア板に固定しました。サーボモータの回転軸とポイントのタイバーは、付属ホーンの軸~腕に0.5φ燐青銅線を巻き付け、それをサーボモータから直角に出すことによって連動させました。この際、燐青銅線に傷をつけないように注意して曲げないと、応力集中による金属疲労で折損します。加工硬化の影響もある様です。
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モータとブラケットはM2ネジ、ブラケットとホイホイは2 mmタッピングネジで固定してあります。小さな木ネジが入手できなかったので、タッピングビスで代用しました。
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サーボモータは固定する前に、中立位置にしておきます(ホーン等も改めて中立、即ち水平垂直に再固定します)。ここでは廉価なサーボテスタを利用して中立位置としました。ついでにオシロスコープで、パルス幅とサーボモータの位置関係も調べてみました。パルス幅(立ち上がりから立ち下がり)が1.5 mSで中立、パルス幅が拡がると時計方向に、狭まると反時計方向に静止位置が移ります。接続したサーボモータの種類をサーボテスタが認識するとも思えないので、パルス幅1.5 mSで中立、というのはデファクトスタンダードと考えてよさそうです。
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設置後の基板裏面です。サーボテスタで試運転してみると、駆動力は非常に大きく、転換不良の心配はなさそうです。むしろ、トルクが大きい分、暴走時や調整不良時の破損が心配です。いずれにせよ、ブラケットや連動部品の耐久性は、実運用のなかで確認していくことになります。

【線路工作】サーボ制御のこと


ホイホイにおけるポイント制御の備忘録です。

従来から、「ポイントマシンにラジコン用のサーボモータを利用できれば、コスト削減になる」というアイデアがありました。今回、DS51K1でラッチングリレーを駆動できることが明らかになりましたので、これで超小型のサーボモータを二値制御すれば、目的は達成されます。ホイホイ裏面に収まる、シノハラのマシンが入手できなくなった現在、幅(=横向きにしたときの厚み)が10 mm以下のサーボモータが利用できれば大いに助かります。

本来ならば、このサイトにある様に、PIC等で直接サーボモータを制御するステーショナリーデコーダを作るのが筋なんでしょうが、今回は安直に、タイマIC(LMC555)を発振させてサーボモータの制御パルスを作り、そのパルス幅をリレーによって抵抗値を変化させることによって目的を達成しようと思います(LMC555の発振周期やパルス幅は、外付けの抵抗及びキャパシタの値で制御されています)。

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ジャンク部品や手持ち在庫品をできるだけ活用して作成したバラック回路です。サーボモータは、エンルート製のA4PGという、幅8 mmのものを使用してあります。Webで探すと、この程度の幅のものは結構あるようです。

回路及び部品定数は、このサイトの例に倣いました。この回路に電源回路として、1 Aの高速ブリッジダイオード(RDF02)と、定電圧レギュレータ(TA7805S)を組み合わせてあります。どこかで読んだ話では、「DCCの供給電力を整流して利用する場合、高速ダイオードを使用しないとブースターに負荷がかかる」そうです。

各所の波形確認には、DSO nanoという、超小型オシロスコープを使いました。結論として、DCCの供給電力を整流すると、かなり綺麗な直流となることを確認することができました。テスト中、ブリッジと定電圧ICの間に入れたキャパシタ(25V耐圧)が飛んで(ジャンクのタンタルキャパシタだったので、故障すると導通→ショートです。こんなとこにタンタル使っちゃいかんのですなぁ…)往生しましたが、テストに使ったKATOのパワーパックジュニアが、0~12 Vという表示にもかかわらず、無負荷では12~23 Vを出力している為でした。可変抵抗を使った電流制御なんでしょうねぇ… 誤接続等の可能性を考え、この位の過電圧に耐えられる様にするか、悩むところです。

今後はサーボモータの取り付け方法を考えつつ、消費電流等の特性を調べていこうと思っています。

2024-4-5追記 回路及び部品定数のリンク先が消滅したので、下記に要点を示しておきます。回路図中、0.22μF/50Vは積層メタライズドポリエステル、0.1μF/25Vは積層セラミックです。