【技術情報】ばねの話


トロリーモデルでは、全輪集電のための集電ブラシや、スプリングポイントのために、ばねが多用されます。そこで、どうすれば柔らかいばねを作ることができるのか、計算式から考えてみました。

Ⅰ.薄板ばね

集電ブラシ等に多用されるばねです。大きく変形しても、かかる力の変化が小さいことが求められます。
計算式は、ここにありました。これを変形して整理すると、

変化量∝荷重×ばね長の3乗/(ばね幅×ばね厚の3乗)

となります。∝は、左右が比例関係になることを意味しています。ここから、変化量と荷重の差分(⊿)を導くと、

⊿変化量∝⊿荷重×ばね長の3乗/(ばね幅×ばね厚の3乗)

となるかと思います。これを読み解くと…

① ばね長を長くすると、変化量は大きくなる。例えば、長さを1.26倍にするだけで、変化量は2倍になる。逆にいえば、同一変化量に対する荷重は半分になる。3乗で利いてくるので、ばね長を伸ばす効果は大きい。

② ばね幅を狭くすると、変化量は大きくなる。ただし、半分の幅にしても、変化量は2倍になるだけである。比例、反比例関係なので、ばね幅を小さくする効果は余り大きくない。

③ ばね厚を薄くすると、変化量は大きくなる。例えば、厚さを8割にするだけで、変化量は2倍になる。逆にいえば、同一変化量に対する荷重は半分になる。3乗で利いてくるので、ばね厚を薄くする効果は大きい。

薄板を自作することは極めて困難なので、薄いばね材を入手する機会があれば、迷わず入手しておくべきだと思います。

Ⅱ.細線ばね

スプリングポイント等に多用されるばねです。これも、大きく変形した際に、かかる力の変化が小さいことが求められます。
計算式は見当たりませんでしたが、丸線を角線と考え、ばね幅=ばね厚と考えれば、方向性は示せる筈です。で、式を書き換えると…

⊿変化量∝⊿荷重×ばね長の3乗/(ばね径の4乗)

となります。読み解くと…

① ばね長を長くすると、変化量は大きくなる。例えば、長さを1.26倍にするだけで、変化量は2倍になる。逆にいえば、同一変化量に対する荷重は半分になる。3乗で利いてくるので、ばね長を伸ばす効果は大きい。

② ばね材を細くすると、変化量は大きくなる。例えば、直径を8割にすると、変化量は2.4倍になる。逆にいえば、同一変化量に対する荷重は4割になる。4乗で利いてくるので、ばね材を細くする効果は非常に大きい。

ということになります。

Ⅲ.ねじりコイルばね

サーボモータによるポイント駆動で、リンケージに使ったばねです。これを柔らかくして、スプリングポイントを兼ねさせられれば好都合なので、これを柔らかくする方向を探ってみます。
計算式は、ここにありました。これを変形して整理すると、

⊿ねじり角∝⊿トルク×コイル平均径×コイル巻数/材料直径の4乗

となり、読み解くと…

① コイル平均径を太くすると、変化量は大きくなる。ただし、2倍径にしても、変化量(この場合はねじり角)は2倍になるだけである。

② コイル巻数を増やすと、変化量は大きくなる。ただし、2倍巻いても、変化量は2倍になるだけである。

③ ばね材を細くすると、変化量は大きくなる。例えば、直径を8割にすると、変化量は2.4倍になる。4乗で利いてくるので、ばね材を細くする効果は非常に大きい。

ということで、ポイントリンケージに使うねじりコイルばねは、直径を大きめに沢山、細い材料で巻くのがいいだろう、という結論になりました。

Ⅳ.余禄

ねじりコイルばね計算式のページに、縦弾性係数の表がありましたので、傾向をみてみました。

① 黄銅(=真鍮)線と燐青銅線は同じ値である。ということは、無理して燐青銅線でばねを作る効果は少ないのかもしれない。

② 燐青銅線で作るくらいなら、洋白線を使うほうがいいのかもしれない。

③ ベベリウム銅線が入手できるなら、集電ブラシにはそれを使うのがいいのだろう。

④ やはりばね用の鋼材やステンレス線は格が違う。

以上、ご参考になれば幸いです。

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