プロトタイプ例

都電今井線の鉄橋


ちょっと機会がありましたので、都電今井線の鉄橋を見学してきました。


鉄橋は一之江境川親水公園の中程、今井街道との交差点の南側に位置しています。北側からみるとこんな感じです。旧城東電軌江戸川線で大正14年開通、紆余曲折あって、都心方向とは結ばれることなく昭和27年にトロリーバスに転換された路線です。最末期には錦糸堀車庫の400形が交代で走っていたとか… 路線規模から2輌使用の1輌予備、1輌検査予備といったところでしょうか、4輌配置だったと聞き及んでいます。


当時ものとしては綺麗過ぎますので、先ず「復元」と思いますが、枕木端には割れ止めが打ちこまれていて、ちゃんと軌道としての体裁が整えられています。


犬釘もちゃんと「ハ」の字形に打たれています。軌間はちゃんと4’6″(1372 mm)でした。ちなみに枕木寸法は2400×200×140 mmで、635 mm間隔でした。

Pacific Electric 100 Series Local Car (3)


塗色を検討します。基準は(どこまで信頼できるかちょっと不安ですが(理由は後述))、The Car Works製のPacific Electric “BLIMP”、#308です。


紙の小片に塗料を塗布してカラーチップを作り、それを見本車体に当てて適否を判断しました。前提として、1)絶対的基準が入手できないので、類似色で我慢すること、2)自家調色は再現性という観点から問題があるので、出来れば既存調色から選定すること、の2点を基本方針としました。

屋根上に載せた色見本は、左から「クレオスc45 セールカラー」、「クレオスc44 タン(ライトブラウン)」です。「クレオスc45 セールカラー」がまぁまぁ合致している様子ですので、これでいこうかと思います。

実車は、大東亜戦争(太平洋戦争は2つあるので…)以前はシルバー、開戦後慌てて軍艦色(USNからの支給、とのことです)で塗装、その後紆余曲折あって最終的に、ここで選んだ「タン」になったらしいです。


車体色です。左から「クレオスc81 あずき色(赤2号)」、「GM29 バーミリオンA」(要するに京急色)、「クレオスc68 モンザレッド」です。モンザレッドは明る過ぎますが、「あずき色」と「バーミリオンA」はいい線いっています。ここは、「京急はPEをモデルにした」という伝説を信じて、「バーミリオンA」とすることにしましょう。


ドアと幕板、ストライプに使用されているオレンジです。The Car Works製の“BLIMP”基準では、上側の「クレオスc59 オレンジ(燈)」と、下側の「GM17 オレンジA」(要するに近鉄特急のオレンジ)の中間辺りの印象でしたが、実際のところこの色は、ストライプの色と同じ筈ですので、使用するデカールと揃えるのが合理的です。ということで、Microscale Industries社の#87-564
と比較してみました。結論として、「クレオスc59 オレンジ(燈)」が、ちょっと華やか過ぎる印象もありますが、そこそこ合致する様です。

最後は室内色です。まぁ常識的に、天井は「白」でしょう。室内壁面は当時の動画を参照しますと(Pacific Electric-Los Angeles Streetcars Combo DVD)、薄緑色の様ですので、「GM41 ブルーC」で塗装することにします。見本とした「The Car Works製“BLIMP”」では、室内全て屋根色で塗りつぶしされていますが、「流石にこれはないかな…」という判断です(だから基準としてはどうかねぇ… ということです)。

江ノ電保存車


先の書き込みで実物例として上げたせいではありませんが、江ノ電の保存車を見てきました。山梨県の利根川公園で保存されている801号車(元山梨交通7形)です。この電車は、昭和23年(1948年)に山梨交通モハ8として汽車会社で製造され、同線廃止後に上田交通モハ2342、江ノ電801となり、昭和61年(1986年)廃車後に当地に保存されたものです。


塗装は山梨交通のものに変更されていますが(色見本帳を持っていくのを忘れました)、上屋が架けられ、廃車後36年を経過したにしては状態が良好です。屋根のカーブがそこそこ割り出せないかと、できるだけ遠くから撮ってみました。


江ノ電時代の連結面です。こちらは少々傷んでいますが補修され、大事にされている様子が伺えます。立派な看板も設置され、来歴やかつての駅名も表示されています。


上田移籍時に設置されたか、江ノ電再移籍時に改造されたかは不明ですが、側面ステップの様子です。こういった細部は、図面等では解らないため、保存車の存在は有難いものです。また、本車が載せられている軌框の枕木は、長さ2080 mm、幅190 mmと、一般のものより一回り細くなっていました。保存車展示によくある、適当な寸法で作ったものと思うとさにあらず、端に「割れ止め」が打ち込められ、犬釘の跡も残っている正規の(?)古枕木です。保存開始時に江ノ電から貰ってきたものでは… と想像されるのですが、現在の枕木規格とはちょっと違っていますので、江ノ電の現行枕木と比べてみたいものです。

さてこの電車、僅か2輌の製造ですが、もう1輌も静岡県内で保存されている由。現役38年を勤め上げ、その後36年が経過した後でも、全車健在ということは、中々幸運な車輌達かと思います。

都電大塚駅前の亘線更新


5年程前に都電荒川線のポイントを踏査し、「各所で鋳物から組立式(正しくは「圧接式」だそうです)に変更されている」という印象を受けていました。まぁそれで今更なのですが、都電大塚駅前の亘線が更新されていましたので、観察してきました。

 
早稲田寄りの踏切からみた新旧比較(左側:2017-8-4撮影 右側:2022-5-3撮影)です。分岐器トングレールの先端が、三ノ輪橋寄りに少々移動した様です。このトングレール、スプリングポイントですので、以前は電車が通過する都度、「パコーン、パコーン」と2回、勢いよく復元して喧しかったのですが、更新後はダンパーが入った様で、「カコン…」の1回で済む(つまり、早稲田側台車が通過して、三ノ輪橋側台車が通過するまで戻らない)様になりました。騒音対策、にもなって幸いです。

 
三ノ輪橋側ポイントの新旧比較(左側:2018-1-30撮影 右側:2022-5-3撮影)です。分岐器トングレールの位置は変っていない様です。新しい方では、写真中央の、白色に塗装された継目板が目立ちます。これは、信号関係の絶縁継目でしょうか?


銘板が読めました。図面番号は「RO50NM#4 4-130」とあります。以前の鋳鋼製フログには、「50-13°」という陽刻がありました。4番フログの交差角は、日本の規格では14°18′ですから、ちょっと急になった様です。分岐器トングレールの先端が、三ノ輪橋寄りに少々移動したのは、この反映と考えますと納得できます。

枕木考(1)


ハンドレイでホイホイを作るとなると、これまでは考えなくて済んでいた枕木の大きさや、配置も考える必要があります。そこで、実例を探ってみました。

1.枕木単体


何はともあれ、枕木の大きさが判らないと何ともなりません。そこで、万葉線の車庫で撮った写真から長さを割り出しました。最奥の枕木ではレールは犬釘で直接、その手前3本ではF形タイプレート(?)を介して締結されています。実は最奥の枕木とその手前の間で、異なる太さのレール(奥側が細い)が溶接で接続されています。ということで、奥が30 kgレール、手前が37 kgレールと考え、レール底面の間隔から枕木の長さを比例配分で計算してみますと、約2.1 mとなりました。

木まくらぎの規格を調べてみますと、分岐器や鉄橋上以外で使われている枕木は長さ2100 mm、幅200 mm、厚さ140 mmとのことです。また、以前入手した1435 mm軌間の路面電車の工事図面でも、同寸の枕木が指定されていました。軌間は違いますが、上を走る電車の重量はほぼ同じでしょうから、1067 mm軌間の路面電車でも同寸法なのでしょう。広く使われているので廉価、ということもあるかもしれません。

2.直線での枕木配置


これは先程述べた工事図面に配置が載っていました。上図のように、長さ12 mのレールに対して18本の枕木が敷かれ、両端以外の16本は700 mm間隔、両端の2本は380 mm間隔となっています。レールの継ぎ目は、直下に枕木がない「かけ継目」です。

3.曲線での枕木配置


これについては敷設工事図面が探し出せなかったので、半径35 m曲線の撤去工事図面にあった枕木配置から推定しました。原図面はPDFでしたが、ベクトルデータでしたので、Inkscapeでスナップを利かせ乍らトレースし、それをJw-cadに読み込ませ、枕木の長さ(2100 mm)から縮尺を合わせてレールの位置と接続箇所を描きました。測ってみますと、外側レールの長さは12 mと推定され、そこでの枕木間隔は概ね直線のそれと同じでした。

先に書いた様に上を走る電車の重量はほぼ同じでしょうから、1435 mm軌間でも1067 mm軌間の路面電車でも、枕木配置は同一で問題ない筈です。また今回計画している180R曲線は、実物換算で約15.6 m半径ですので、実例の35 m半径とは大差がありますが、同じ考え方で枕木を配置すれば模型としては充分でしょう。

ということで、何とか実物の寸法と配置は推定できましたので、次はこれをどのようにして模型寸法に落とし込むかを考えねばなりません。