DCC

DCCポイント制御機器

以前、Kingyoさんから頂いた機材のなかに、DCC用のポイント制御機器があります。Digitrax社製のステーショナリーデコーダDS52が内蔵されている(裏側にそう書かれていますので…)とのことですが、詳細が不明です。そこで内部を確認し、構造や使用方法を明らかにしようと思います。


接続用コードが出ている側です。向かって左の孔から右の孔にかけて、赤黒コード二本、青白コードが二本、赤黒コードが一本出ています。左の孔には「31」、右の孔には「32」と番号が振られています。左と中央の孔からそれぞれ出ている二本のコードの先には、それぞれKATO接続用コードに使用されているソケットとプラグが、右の孔から出ている赤黒コードの先にはソケットが付けられています。書かれている数字は、確認は未だしていませんが、デコーダアドレスと考えられます。尚ここでは、給電側をソケット、受電側をプラグと記述しています。


内部構造です。DS52は、ジャンパーピンによってソレノイド形ポイントマシン、即ち、短時間通電して転換させるタイプに設定されています。向かって右と中央の孔を潜ったコード(計3本)は直接、DS52に接続されていますが、左の孔を潜ったコード(2本)は、ユニバーサル基板上に組まれた回路を介してDS52に結ばれています。基板上にはSDI2100(ショットキーバリア・ダイオードブリッジ)とG6J-2P-Y(シングル・ステイブル形リレー)が載っています。


分解して調べた回路図がこちらです。一番下の赤黒コードが接続されたプラグからKATOユニトラックポイント用の操作電流が入った時には、その電流がそのままソケットに出力されます。同様の操作電流がDS52から入った場合には、その電流でリレーを動作させて回路を切り換え、DS52からの電流がソケットへ出力されます。つまり、プラグにKATOのポイントスイッチからの操作電流を入れられる様にすれば、DCCによるリモート制御と、ポイントスイッチによるマニュアル制御が両立する、ということになっています。

また、青白コードの接続は、DCCバス配線への割り込み接続が出来る様に工夫されています。汎用性が高い機材ですので、今後活用していきたいと思っています。

【進捗状況】SEPTA Kawasaki LRVの電装(1)

台車を組み立てたSEPTA Kawasaki LRVの電装を進めています。


使用するTCS製M4Tデコーダです。1インチ長のハーネスにNMRA 8ピンプラグが付いています。元々はBowser製PCCをDCC化するための製品で、弊社でもロサンゼルス(LARy)塗装の1052号のDCC化に使用しています。このデコーダは、尾灯(黄色リード線)がブレーキ灯として機能する様になっていますが、Bowser製PCCがデコーダを搭載する様になったので、発売されなくなってしまいました。

調べてみると、この製品は、普通のM4デコーダをトロリー用に設定したものでした。トロリー用に設定するために色々なCV値を操作する必要もなく、CV8に11を書き込むと、関連CVが全てトロリー用にセットされる様です。で、この機能は、TCS製のデコーダには標準で付いている様子なので、そのうち、Bachmann製Birney Safety Carに搭載したKAT22デコーダでテストしてみようかと考えています。


NMRAプラグを外して、配線中継用のPCBにハンダ付した状態です。BLIMPと異なり、こちらではFXで制御する白色、黄色、緑色、青色リード線も使用しますので、PCBは大きめに作ってみました。


SEPTA Kawasaki LRVのブレーキ灯は、左右交互に点滅する、という特徴があります。そこで、デコーダからブレーキ灯への配線の途中に、Ngineering製のLED交互点滅回路(N8015)を入れてみることにします。回路は、誂えたように写真のスペースに収まります。台車後側に配線中継用PCBを置き、デコーダをLED交互点滅回路の上に載せれば、うまく収まりそうです。

ちなみに、台車~デコーダ~モーターの配線には、Bowser製MSR952号車の修理で得た知見から、I社から発売されている「耐熱リード線」を使うことにします。デコーダから出ているコードもかなり細いので、問題はないだろうとの判断です。

引き継ぎ亘り線の配線設定

kingyoさんから引き継いだ亘り線の詳細を調べてみました。


表面写真です。ボードは350×150 mm、複線間隔は50 mmと、標準ホイホイの規格に沿った構成です。以前お伺いしたところでは、500 mmRの反向曲線で複線を結んで亘り線としている、とのことでした。2つの曲線の間に直線が挟まれているかどうかについては、「覚えていない」ということでした。


長手方向を軸に反転させて、裏をみたところです。フログの極性切換と、対行配線時におけるリバース区間の極性切替のためのDual Frog Juicerが内蔵されています。その上のラグ板は、並行/対行配線を切り替えるための仕掛けです。左上で遊んでいる線バネは、表面写真で左下に位置するスプリングポイントを直線側に開通させ、終点での留置線として使える様にするためのものです。で、対行配線の場合には、右上から伸びる線路がリバース区間となります。


これが、配線を辿って判明した、並行/対行配線の切替設定です。裏面に「覚書」があるのですが、(電気的には確かにそうなんですが…)実際にはない配線が描かれていたり、「暗黙知」な部分もあったりして理解するのに時間がかかりました。

結局、右下に書かれたメモ「Dog Bone:ワイヤ色 Parallel:シュリンク色」というのは、対行の場合はシュリンクの色を、並行の場合はワイヤの色を、ラグ板への配線色に合わせなさい」という意味でした。この、「ラグ板への配線と合わせる」というのが、判ってみれば簡単なことなのですが、「暗黙知」でした。この、「暗黙知」云々ということは、自省でもあります。私も、ループ線交差部や複線分岐で、同様の仕掛けを仕込んでいますが、ラグ板への配線が非表示です。なるべく早くメモを作って、貼っておかないといけません。

これでまた、この亘り線を運転会で活躍させる目途がつきました。手持ちの450 mm長亘り線は、内部構造からくる制限により、対行配線への対応改造ができませんので、助かります。

【追悼】kingyo(中澤 寛)さん

弊グループ創設者のひとりで、初代代表を勤められましたkingyo(中澤 寛)さんが、去る11月12日、旅行の途上、米国シカゴで亡くなられました。

中澤さんの業績としては、「ドアの開く電車」の他、様々なギミックを満載した車輌が知られていますが、ここではちょっと趣を変えて、線路・制御関係の業績をお伝えしたいと思います。

まず第一は、「トロリーホイホイ」の開発です。複線間隔50 mm、曲線半径250 mmという大枠はそれ以前に定まっていましたが、ユニット間の接続に、KATOユニトラックの接続部を利用する、ということの発案と実証をされたことに、我々は大いに助けられました。当初私は、「寸法を全接続部で揃えるのは困難であろう」と考えましたが、実際に製作してみますと、ステンレススケールを使った罫書レベルで互換性を確保することができ、不明を恥じました。我々の他にもこの方法を利用されている方がおられると漏れ聞きますので、今後に繋がる業績かと思います。

二番目は、本邦におけるDCC普及の先駆的役割です。2000年8月13日の、第1回国際鉄道模型コンベンションのクリニック1コマ目で、DCCとトロリーホイホイのデモをされました。KATOがDCCを扱う直前です。その後、訪日されていたDigitrax社の社長、Jill Irelandさん(記憶に頼って書いています。申し訳ありませんが、間違いはご容赦願えればと思います)と、親しく話されていたのことが、昨日のように思い出されます。

三番目は、複線配置におけるフィーダ配置で、「対向配置」、即ち、4本のレールのうち、外側2本を同一極性、内側2本を反対側同一極性とするフィーダー配置を紹介されたことです。ご本人は、「ドッグボーン配線」と呼ばれていましたので、単線エンドレスのドッグボーン配置をヒントにされたものであることは明らかですが、このフィーダー配置は他に例があったのか、それとも中澤さんのオリジナルだったのか… 確認する術は失われてしまいました。このフィーダー配置は、リバースを含む配置では、非常に効果的な配線方法です。また、「トロリーホイホイ」のフィーダーは、KATOのDC延長コード(青白)を利用していますが、外側を「青」、内側を「白」に間違えなく接続しておけば、(亘線を例外にして)ホイホイの向きを特段気にしないで接続できる点で、設置時のミス防止に有効でした。

この他にも、線路・制御関係では、様々なアイデアの発案と、製品紹介と購入のご助力を頂きました。

中澤さんとは、パソコン通信ニフティサーブ以来、凡そ四半世紀のお付き合いを頂きました。その間、色々とご迷惑をおかけしてしまいました。それにもかかわらず、長年に渡り、一緒に楽しませて頂きました。ありがとうございました。

“BLIMP”のリパワリングとDCC化

The Car Works製のPacific Electric “BLIMP” の動力装置を更新し、DCCデコーダを搭載しました。


モーターをIMONのミニモーターD2に、ジョイントをエンドウのユニバーサルジョイントに変更しました。モーターホルダーは取付孔とベアリング嵌合孔をちょっと拡げて再用しました。長細くて、余り利きそうにないフライホィールも、引っ張ったら簡単に外れましたので、「枯葉も山の賑わい(つまらないものでも,ないよりはまし)」ということで移植してみました。台車とギアボックスは再用しました。


(裏返っていて型番がみえませんが…)DCCデコーダは、在庫品から掘り出してきたDigitraxのDH121です。或る特定のCV値の、或る特定のビットを触ると動作しなくなる(回復不能)という問題を抱えたデコーダですが、ここでは単純にモーターだけの制御(本製品のライトは全てダミーです)ですので、役立って頂くことにしました。何かあってもソケット付ですから、簡単に交換できます。


その他にも、台車の追従性向上のため、動力台車のセンターピンスプリングは撤去し、付随台車のセンターピンネジを緩めました。緩めただけでは抜けてきますので、下側からロックナットを噛ませました。非絶縁側車輪からの集電は、オリジナルではセンターピン経由で導通していましたが、センターピンスプリングを撤去したり、センターピンネジを緩めたりしましたので、その辺の導通は最早期待できません。そこで、台車に直接コードを接続して、良好な導通を目指すことにしました。コードは、分解時を考え、IMONの穴径φ1.4 mmのラグ板を介し、台車組立ネジに共締めしました。当然のことですが、接触部の塗膜は剥がしておかないと、導通に支障がでます。弊社では、デザインナイフの刃先で塗膜を剥がしてみました。台車枕梁のボルスターとの摺動面には、10B鉛筆で、潤滑用の黒鉛を刷り込んであります。

とりあえず、ここまで弄ってみましたが、滑らかに走行させるには、もうちょっとチューニングが必要な様です。