【合運始末】ATLAS製スナップポイントの検討
2015年1月9日 9:12 PM | 投稿者名: treasure
平成26年関東合運において、ATLAS製スナップポイントは、ストックレールとトングレールの接触点の前後(凡そ2 mm程度)において、ゲージが広くなっていることが明らかになりました。
NMRAゲージで測ってみますと、写真のように落ち込みます。ノギスで計ってみますと、ゲージは17.25 mm程になっています。
トングレール先端の厚さをゼロにすることは不可能なので、その影響を回避するために、1)ストックレールを削って凹みを作る、2)トングレール先端をレール面-フランジ高より下げる、という工夫があります。2つのうち、どちらかを行っていれば充分だと思われるのですが、このポイントには両方の工夫が適用されています。これが脱線等の原因になる様でしたら、舗装する前に何らかの手当てをせねばなりませんので、その辺りを考察してみました。
先ず、この程度のゲージの違いで輪軸が落ちるかどうかを検討してみます。
図で示した通り、線路に対して輪軸がぎりぎりまで偏った状態が、最も落ち込みやすい状況です。ここでゲージが、輪軸のチェックゲージ+車輪厚を超えると落ち込んでしまいます。NMRAのS-4.2によれば、チェックゲージ(K)の下限は15.14 mm、車輪厚(N)の公称値が2.79 mmですので、ゲージが17.93 mmより広くなると落ち込んで脱線する場合があることになります。そのような場合でも、車輪はレールに0.5 mm以上掛っていますから、まぁ大丈夫ではなかろうか、と考えられます。実際のところ、BowserのPCCカーに使用されている輪軸のチェックゲージは15.3 mm、車輪厚は2.8 mmなので、更に余裕があるものと考えられます。
次に、果たして長さ2 mm程度の凹みに、輪軸が嵌り込むかどうかを検討してみます。
路面電車等で使用される26’φ(HOで7.6 mmφ)で、フランジ高0.71 mmの車輪を考えると、図示の通り、フランジがレール面以下になっている長さは4.86 mmです。フランジ高0.71 mmというのは最大値なので、これを0.5 mmとしてみても、約4 mmがレール面以下になります。ということは、長さ2 mm程度の凹みに嵌り込むことはなさそうです。
ということで、じゃぁどれだけの厚さの車輪ならば落ちずに済むのか、を計算してみました。
凹んでいる箇所の直前のゲージは16.8 mmです。片側はフランジが凹みの前後に引っ掛かりますから、ゲージは実質的には(16.8+17.25)÷2≒17.03です。これからチェックゲージの最小値を引くと1.89… チェックゲージが合致していれば、ここはかなり薄い車輪でも大丈夫でしょう。ちなみに、NMRA Standards Gageで、車輪チェック用スリット(入ってはいけない)の幅を計ってみると、2.7 mmでした。
最後にNMRA規格をもう一度眺めてみました。
S-3.2では、確かにゲージは16.49~16.79 mmとなっています。しかし、S-1.2をみてみると、ゲージは16.50~17.07です。おまけに、S-3.2には「Gage at Frog」での値、S-1では、ゲージは「a length of track」でのレール頭部間の距離とあります。「a length of track」がどの程度なのかが問題なのですが、2番目の検討の通り、フランジがレール面以下になる長さは意外と長いので、2 mm程度の間、少々凹んで、ゲージが拡がっていることは問題にはなりそうもありません。大体、何処でも規格通りのレール頭部間隔を維持しなければならないのであれば、直交クロスはフランジウェイを越える部分(フランジウェイの最大幅は1.27 mmです)で規格を満たしていないことになります。直交クロスだとこの位で済みますが、4番ポイントだとこの長さは5 mmm以上になります。そういった問題をクリアするためにも、規格的には「a lenth of track」になっているのでしょう。
ということで、実用上問題ない範囲と判断しましたので、先の工作会のレポートにありました通り、特に修正はせず、舗装工事に入っております。
本稿を記すにあたり、ddx40氏、Kiyo Inaba氏、ワークスK氏のblogやwebページを参考にさせて頂くと同時に、多大な知見を頂きました。厚く御礼申し上げます。
カテゴリー:工作, 江東電気軌道(KDK) | コメント(0)
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